カテゴリー「観劇」の188件の記事

うらすさび10

「戯伝写楽」雑感もうちょこっと。

■書き残しよしち(栗山編)
ふたりの与七の違い、いろいろありましたけども、お芝居の印象を変えてたなあ、と思うのが、それぞれの十郎兵衛との距離感でした。
東山君はほとんど十さんとツーカーで、特に前半はシンクロせんばかりのコンビ技が楽しいわけですが、栗山君は逆に、年も立場も離れてるから「第三者」としている、クッキリした三角の構造を楽しめた気がします。鉄蔵ともなんかこう若造同士というか、急な肩ポンなんだあれと思ってきたんですけど、栗山モードは最終的に「土手の殴り合い後」が成立してたんでここもクリアー(笑)。
千秋楽、ひさびさの栗山君で「ほぉぉ!」と思ったのが、スランプに入ったおせいを見ながらの一連。「十さんはおせいちゃんの味方になると思ってた」の言い方が素直な反発なのは前からですが、「浮雲は心中したよ」の言い方が、おせいに聞かせる意志を持って「心中したよ」って言ってる流れがとても明瞭なとこにグッと来た。そこまでけっこう子供っぽかった栗山与七が、急に大人びて見える。ほー十さんそうですか、俺は言うよ、おせいちゃんの行きたいほうに行かせるよ、っていう流れが「豹変」に見えるあたり。「なんで!行かせてやりゃいいじゃねえか!」のストレートな怒りも含めて鮮やかでした。

■書き残しよしち(東山編)
隠れ家で与七がキレるシーン。「誰ですかーハイちょっと難しいぞ十郎兵衛ー!」と教師モードのワンブレスで十さんに振る、それに十さんがボケる、さらに忘れた頃におせいがかぶせてくる、というのが一連の流れで。
一番凄かったのは東京前楽だったかの「よしち三十二さんー!」「掛けるなァ!しかも…二十八や!!!」という三段構えだったわけですが。おせいの蒸し返し「よしち二十八さん」「計算できとるけど!!」まで息をするのも辛かった(笑)。
ほかにも
「よななさん」「訓読みて!」
「なななさん」「誰や!」
「よいちさん、よにさんよさんさん」
おせいとのやりとりも
「ごちそうさま木こりさん」「名前ですらねえ!俺は家政婦でも木こりでもないわ…」
「よはちさん?よきゅうさん?…よじゅ」「8から上がっていったら永久にたどり着かへん!」
「よさくさん」の時はヘイヘイホーーーーな口笛をクリアに響かせて去ってったし。
毎回ゲラゲラ笑ってたものです。

■ぷちぷち
・「おせっかいかも知れねえが」が、転換の人に対するおせっかいとかぶっていていい感じだなあといつも想っていた。
・市さんの表情でいちばん好きだったの「光が闇をつくる」で浮雲に走り寄っていく時の表情だったんですが、角度限定と歌詞探索でほとんど見られなかったなあ。
・蔦屋の番頭さんの水撒き大好きでした。水撒いてから「水撒くよ」って言いやがる、というのがトークでネタになった次の日が千秋楽で、「もうかけてるじゃねえか」ってとうとう言われていた。
・その間タダ酒先生は下手のほうで遠巻きに見守っていた。
・鶴喜さんと富三郎丈はめっちゃ付き合いに年輪を感じるんですが、「優しいお人柄の現われでは?」「優しい、ねえ」でばしっとウィンクするとか、歌麿と浮雲がちょっと艶っぽい空気になってきたな、ってとこで富さんが手の甲で鶴さんの足のあたりをとん、とはたくとか、色っぽい、でもあっさり、っていう見え方がたいへんにツボでした。

■観察者
ニ幕の大田先生について。
公演の初期の大田南畝は、どっちかというと「飄々」に主軸があったというか、「実は」けっこう薄情、「ひょっとしたら」割と人が悪いね、ぐらいの印象でした。「さ、こっちに来い」みたいな台詞も、吉か凶かどっちに転ぶかわからんけどまあ、異世界においで、みたいなニュートラルさがあって(それでも相当アレでしたが)。
最終的には、いやこの人 怖いわ!となったと感じます。悪い、ワケじゃなくて、怖い(笑)。ただただ芸術家、あたりまえに貪欲。冷静でミもフタもなくて、怖いくらい正直で、ヒトガワルイ。なべてのものを見んとの執着。ちょっと、話が面白くなりゃあいい。
浮雲と遊ぶのも、浮雲の処刑を眺めるのも一緒。「ころりと騙されちまった」って歌いつつ、浮雲に対してぜんぜん怒ってない、まだ歌麿には自分を嘲る潔癖さがみたいなものが伺えるけどそういうのもない、ハアそんなもんだぁね、剣呑剣呑。そこには芸術家らしい、めちゃくちゃ外側からの鑑賞眼しかないっていう。
そんなスタンスの大田先生が歌麿に「どうしてもあんたにこの絵を見せたくて」とか言ってるの見ると、「うっわー楽しそう」が先に立つ。

■表現者
「あんたにも描けないかい」のくだりからの、歌麿の表情の移ろいは本当に好きでした。
あの場面の大田南畝は軽い顔でポンポン歌麿に爆弾ぶつけてく感じですが、
絵を歌麿に見せる→気を取り直す出鼻で「あんたにも描けないかい」と突き落とす→そこから「あまりに真を描かんとて」までピンと張った空気が続いていく、それが
「ってところかなー」
でやっといつもの大田先生の気楽な空気を出してくるわけで。
ここまでずっと強張った顔で大田先生を見ていた歌麿が、この、急に砕けてきた先達に、笑いを返すか返さないかぐらいに口元を歪ませて、「けんのん、けんのん…」と去っていくのを見送る。
そこからあのBGMに乗って、またこわばった表情に戻っていき、よろめくように歌い出す。
よかったなあ…。
あの歌の詞って、写楽に対する敗北感と、自分の絵描きとしての生き方の肯定と、両方を含んでると思うんですけど、その後半の「私は描く、綺麗な夢」は、肯定でいながらとてもこう、「そっちへは行けない」っていう諦観やらむなしさやら、ひょっとしたら哀しみやらあるんだろうなあ…っていう空気が好きでした。
「それでも一度、本当の写楽に」の「それでも」のニュアンスをいつも想像しながら帰ったものだ。
ついでに書いちゃいますが、ここの一連の群衆のストップモーションも本当ーーーーに見事でしたブラボー。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

うらすさび9

兵庫公演にて「戯伝写楽2018」終了。
あっという間の一ヶ月でした。本当に楽しかったし、びっくりするほど奥が深くて深くて深い、追いきれなかった細かい未練も満載の(笑)実にありがたい作品でありました。

これから観劇はしばらく空くので、つらつら語っていきたいと思います。

■場所に恵まれた話
兵庫県芸術文化センターの中ホール。何度か行っていますが、ほんっと向いてる、この作品に向いてる。
まず客席と舞台が近い。最前の真ん前が舞台で、舞台の位置が低め、かつ客席の傾斜が大きめなので、とにかく見やすい。全体に狭めでもあって、客席がストーンと縦に三ブロック、横の通路がないので、十さんもおせいも舞台の後方からまっすぐ突っ切っていく動線が楽しい。
そして音がいい、とにかく音が通る。「この劇場は音が通りやすいので、客席の音も響きます」みたいな注意が入るくらい、音がよぉぉく通る。大田先生がベターッと倒れてかはかは言ってる声とか、カテコでK吾さんがヨシ君にウォイとか掛けてる声とか超よく聞こえる。楽しい。
中でも鳥肌立ったのが初日、「おせいが狂った…」と歌い上げる十郎兵衛の歌、「もう聞くな、くだらねえ、俺はただ生きるだけ、答えのない明日へ…」でいったん、声も曲もとぎれる。この瞬間に、後方で描き続けるおせいが紙を手探るガサガサッ!!!という音が響きわたって、そこへ、
「なんのため落ちてきた!もう聞くなわかっている」っていう十郎兵衛の慟哭のような歌声が轟く。いや、ホント、忘れがたい。
そんな感じでとっても贅沢しました。東京のミュージカルではこういう劇場、使われないよなあ…言っても詮無いがホント惜しい。

■見逃してた話
一幕の「写楽話題騒然」の歌、大好きなんですが、ここは個人的にたいへん忙しいナンバーで。自担が踊り狂ってるし、与七の踊りも見てたいし。
なのでたいがい「気がつくと歌麿・鶴喜・ぐにゃ富がセンターでむすっとしてる」っていう見え方でして。地方でいろいろ俯瞰して、あまりの情報量の多さに心で謝った。
「あれをごらん!大谷鬼次の奴江戸兵衛」では「へぇぇ」って感じで喜んでた富三郎さんが、自分の絵が出た瞬間ギャーッ!ってなってみんなにからかわれて後ろの大きな絵を必死で隠そうとしてたり、鶴屋さんはその富三郎丈と前半から噂話してて後半ではみんなと笑ってるんで富さんにくってかかられてたり。そしてほぼ曲の終盤で登場する歌麿は、ふと通りかかって絵を渡されて、ん?と見やって「!!!」となる。からの、憮然とした(いったん落ち着いた)表情だったんだなあ、という。
特に最後の「歌麿の衝撃」はあの賑やかなナンバーに混ざっちゃってるのはちょっと惜しかったかもな、と思います。絵を両手で持って目を見開いて、そのまま前へダダダっと走るようにのめりこむ。二幕の、浮雲の絵を見たときに、ダイレクトに重なってく絵なので。
や、見てる人はちゃんと見てたと思いますけど!しょうがないじゃんせっかくヨシ君と共演してんのに一緒のダンスナンバーなんてここだけなんだよーっ(ファン事情)。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

うらすさび8

「戯伝写楽」久留米こまごま。

■十返舎一九まだまだ若い
「あれをごらん・栗山与七・お江戸一番のイケメンさー
 こっちも来た・東山与七・これも一番と評判さー」
てな語呂合わせを考え続けたが字余りを抜けられない。
そんなわけで2週間ぶりに観た栗山与七、めっちゃ良かった。めっっっっちゃ良かった(二回言う)。
いや私、うっすいなりに東山ウォッチャーでもありますが、与七はホントダブルキャストだったことでお芝居全体が面白くなったなと思う。
それぞれの与七の味や十さんとの関係の見え方については前に書きましたけども、ひさびさに観るとあの、まっすぐさのインパクト凄い。
しょっぱなの言い合いでの十さんの「この青二才!」の一言がスパッと決まった。青二才。そうまだ世に出てない青二才。

■アフタートーク
組み合わせがピーキーだったと思う(総括)。面白かったけど!
・東山君(MC/東京との違いを意識して真面目にやっている)
・小西君(上手から吉野・さとしさん・しょこたんという濃さを意識して備えている)
・しょこたん(しょこたんオーラ)
・さとしさん(座長オーラ)
・吉野さん(東山見守りモード)(かの人の「見守る」顔は大層怖いです)
いや、ファンは最高に面白いけど、初見率高い公演であのタイトロープは何事かと思われたんじゃないかな(^^;)。
あんまりにも男子全員がMCに対して塩だから、しまいにかわいそうになったらしい小西君がヨシ君にフォローしようとして「写楽が大好きだよね」と振ったのは好感度高かった。いっぽう歌麿の台詞噛んじゃった話がひとくさりネタになっていたのはかわいそうだった…。が、当初「すいませんでした」と本気の反省モードだった小西君が最終的に「すいませんでしたァ!」とガチモード(ネタ)になったので、全体として男性陣の作戦だったのかも知れない(世界一周するぐらい遠回りのフォロー)。
そんな中しょこたんの聖子様コールがトーク全体を綺麗にコーティングしてました。(しめくくりはさとしさん熱唱のホールドミー)

■いろいろあった
久留米二日目、「八立か!おもしろいモン持ってるな」からの一連。おせいちゃんが紙と八立を取り出して十さんの顔を描く…という場面。
まあ、事象をありていに言うと、八立と紙がない(^^;)。
1)パントマイムで行く判断→手早く絵を描く仕草をして、十さんに「これ」と見せるおせいちゃん。
2)それを受け取らざるを得ない十さん(カテコにて「さっさと渡すから!その後ぜんぶマイムですよ!!」)
3)「すげえ!大胆な絵や!」からエア絵を受け取って空に掲げたりして喜ぶ栗山与七(まぶしい)
初見なら多少クエスチョンありつつ「こういうシーンなのかなー」で成立してたと思う。

■いろいろあった2
浮雲の心中のことを聞いておせい飛び出す、十さん追う、与七が一人ごちる、その後ろでセットが転換して磔台が現れる、というタイミング。
その前の場面でおせいがぐちゃぐちゃにした紙が一枚、床に落ちてまして。それ自体はよくあることなんだけど、転換のついでにそれを片づけようとしてちょっとセットが引っかかったりしたらしく、かなり時間がかかってて。そのせいかは分からないんだけど、
浮雲さんが自ら命を絶つ場面で、匕首かかんざしかわからないんだけど刃物を髪から出すところ、手前の死角になってるところからザッ!と取り出して刺す動きでした。たぶんセットのトラブルから段取り変わったんだろうなと。結果、とっさの動きがまたすごくドキッとする流れになってて、絵的にかなり見事だった。びっくりした。

■いろいろあった3
東京初日以来のハプニング(たぶん)、見事にすっ飛んだラストシーンの飛び出しナイフ(笑)。いや、よく飛んだ…。客席に落ちたわりに十さん、すぐに手に持ってたとこみると最前列の人が渡してくれたんだろうな。カテコでも繰り返し前列の人に頭を下げていた(笑)。「バネが元気だった」とおっしゃってましたが、二階席ひとりじめしていた東山君、トークショーの時に東京初日のことを聞いて大笑いしてたけど、今回観れてたかなあ。

■千秋楽カーテンコール
つぶやきで書いちゃいましたが、けっこう楽しかった前の日のトークイベントが吹っ飛ぶ勢いの濃さだった…威力あったなあいろいろ。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

うらすさび7

「戯伝写楽」いろいろ。

■1/26アフトクぷちぷち
「ま、お酒の入らない飲み会みたいな感じでー、気楽にー」というMC東山君の前フリに違わず(笑)実にたらったらしたリズム&絵面で、でもすごーく内容がちゃんとしているという奇跡のようなアフタートーク。
・「なんか面白いことありましたか。僕のいない間に」というフリに答えてさとしさん、初日のラストシーンで飛び出し小刀が吹っ飛んだ話。「狂言ばかりがうまくなるぜ」って言いながらぴょーんと跳ねさせた小刀が、そのまんま客席へ…っていう再現に大受け。
・舞台稽古で十郎兵衛が浮雲を「脱がせすぎた」話。「とっさに僕がブラジャーになって隠しました」
・壮さんと東山君の気安い絡み…か?いやむしろバトル…か?なやりとりがバシバシ飛び交う。花魁の舌打ちが聞けるアフトクも珍しい(笑)。
・孔雀の打ち掛けを「ホラ着せてあげる」と与七の背中にかけてあげる花魁。そのまま背中の模様を見せてまっすぐ立ち、顔だけこっちに向けかっこいいポーズをとる与七。
・しょこたんがラストの挨拶で話す間、そのまま立ってる与七。…絵的に、ものすごい邪魔(笑)。
・小西君、ラスト挨拶で客席へ「ヨシ君、この人、ときどき英語しゃべりますから気をつけててください。バイバイとか言いますから」撃沈東山。
さすがの楽しさでした。久留米初日もアフタートークありですが、メンツ的にまたMCヨシ君だよね…(戦慄)(爆弾がいる)

■似顔絵の話
ラストシーン、十郎兵衛がおせいの描いた自分の似顔絵を破こうとして思いとどまる、というところ。
アフタートークでさとしさんが言ってたのですが、初演ではあの絵はバラバラに引き裂いてパーッと撒いて退場していたと(そういえばそうだった)。でも、今回はなぜか、その破くという行為ができなくなった。しょこたんのおせいを見ていて…というところもあるし、自分がこの8年で変わったのかも知れないし、なんか破けない、と。
 し「じゃあお芝居によっては破くかも知れないってことですか」
 さ「ああもうビリッビリに破くかも知れない」
なんて軽口も交わされており、そこは「へぇぇー」で終わったんだけど。
後からジワジワ来たのが、あの十郎兵衛の似顔絵って、作中で浮雲の死の後におせいが描いた唯一の絵なんだよなあと。
「光だけ見ていた」おせいは、浮雲との邂逅で「闇」「いつわり」といった、濁の世界に踏み込んだ。そのまま浮雲の死に触れ、取り付かれ、十郎兵衛の小刀を浴びたことで、そこから戻ってきた。
あの「いい男」の絵は、それまで世に出た写楽の絵や、浮雲もの死の絵も越えた、光も闇も、ぜんぶの要素を写すことができるようになった、写楽を超えたおせいの絵なんだろうなと。十さんの「面白い」ところをついに描ききることができた、結果、おせいにしか見えない「いい男」の全容が絵に現れてたってことなのかなーと。
…例によって、文にすると今更感が凄いですが。
十郎兵衛を描ききって、おせいは去っていく。
その絵を捨てられなまま、十さんは歩いていく。
いい、ラストじゃねえか…。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

うらすさび6

「戯伝写楽」あっという間に東京千秋楽。
書き溜め雑感コツコツ行きます。

■東山与七こまごま
・おせいと出会うシーンで、彼女と十郎兵衛を見比べる視線がとても好き。ここは栗山君の場合、ヒントを見つけて「これは…」って徐々にわくわくし出すイメージだけど、ヨシ君の場合文筆業でそこそこキャリアがある感じなので、「お」って思ったタイミング、すちゃっと物書きの目に切り替わる、ああ普段からこのスイッチのオンオフしてんだな、って感じ。
・おさんどん姿を初めて見たとき、なんだろう、なんか既視感がある…あの形、頭が伸びたような形と前屈みの姿勢、全体にグレーな感じ…ああ五十音順のぬらりひょんだと気づいた時は心の中で懺悔した。
・のに、これが一幕ラストには背をビシっと伸ばして着物姿もスラッとして髪も表情もシュッ!!としたキラッキラの若衆になってて「何?いつの間に変身した?奇跡???」ってなった初見の時。「俺は一九や」で頭の手ぬぐいとって、歌が始まるところでタスキをとってたんだと今では分かってますが、あまりに自然さシームレスさに感動したでござる。

■膝栗毛って徒歩っていう意味なんですってね。
中島脚本だからここは凄かろう、というのは期待としてあったんだけど、一人一人の「この先」を予感させる台詞の数々はやっぱ痺れますね。
鉄蔵の「赤富士」はくっきり表現されてるけど、与七の「東海道五十三次、宿の数だけ商売がある。覚えときます」は弥次さん喜多さんにつながってくんだろうし、大田南畝の「あまりに真を…」は後に「浮世絵類考」として編纂されていく元の言葉なんだそうだし。
冒頭に出てくる「難波屋おきた」と「高島おひさ」はその後も何度も歌麿のモデルになってるみたいですね。

■手妻あり
本来あの飛び出しナイフの仕掛けってどっちかというとわかりやすい伏線だと思うんだけど、ラストの種明かしでホッとした笑いが起きるのはなかなかに凄いと思う。鉄蔵の緊張に、そしておせいの迫力に引きずられて、すっかり引き込まれて「どうするのこれ!」ってなったところへ、十郎兵衛の選択やおせいの結末に納得感が生まれる。だからこその「あああ、あんなに分かりやすい伏線だったのに、気づかなかった…!!」なんだろうなーと。「確かに斬ったよ」ってそう簡単に成立する台詞じゃないよなあ。
ところでこの仕掛け、「飛び出す匕首とか血糊とか仕込むお能って剣呑だな」と思ってましたが「芝居小屋で借りてきた」っていうのは別にお能とは関係なくってことかな。きっとそうだな(^^;)

| | コメント (1) | トラックバック (0)

うらすさび5

「戯伝写楽」東山バージョンの与七、初日を観てきました。

おぉもしろかったー。東山君ならではのテンポや華やアドリブ(たぶん)も最高でしたし、このタイミングで入ってくれたことで、栗山バージョンの与七との見え方の違いにもワクワクした。

栗山君の与七はデフォの印象が「独り立ちしたぐらいの青年、駆け出しの文筆家」て感じで、十郎兵衛は年の離れた兄貴か叔父貴って感じでしたが、対して東山君は、もう自分の生き方も芸術も在る程度確立してて、ただ立ち回り方を見極めながら世を渡ってるフリーの社会人みたいな感じ。こんなに世慣れてたっけか(笑)というか、ほぼ十さんと同い年ぐらいに見える。
「十返舎一九、まだまだ若い」が、栗山与七は見たまんま、東山与七はオトナに対するからかいっぽいというか。

おせいと出会った十さんが「こいつの奢りで歌舞伎につれてってやる」って二人で飛び出していったところの「しゃあないな!」
この時点で東山君は「あっこの人は腹に一物あるんだな」っていう感じ。
栗山君は単純に「楽しそう」なんだけど、この場合面白いのが、おせいに「だって与七さん」…って指摘されるとこのインパクト。「えぇ?単に親切な若者じゃないんだ?」ってなって、「ワイは一九や」で凄い爽快感が出る。

与七に借金したりおせいの生活を任せっきりにしたりする十さんの印象も、東山版だと「しょうがないなー(苦笑)」で済むけど栗山版だと「ダメだこの男」感が炸裂する。

いちばん違うなと思ったのは、おせいに役者絵を描き続けさせようとする十郎兵衛への「へぇー…」からの一連。栗山君は「なんでおせいの味方になってやらない!」って、クリアな怒り(おせいのために怒っているような)をたたきつける。東山君だと、最初は大人らしく「意外だな」って感想だけを告げるモードなのに、ふつふつとこう「芸術への態度」みたいなものへの怒りがわき上がってくる感じ。

栗山
・野心がある、これからの若者。
・大人な十さんに理想がある。「大人」
・だから、まっすぐに怒る。

東山
・清濁併せ持つ、世渡り上手な大人
・十さんの生き方にまぶしさがある。「けして自分にはないもの」
・だから、幻滅をたたきつける。

ってところかなー(ふわふわ)。

ちなみに栗山版にしろ東山版にしろ、与七が鉄蔵と意気投合する流れは今んとこ腑に落ちません(^^;)突然の肩ポン。あそこしか二人が一緒に仕事するキッカケのシーンがないのはわかるがしかし。

おまけ。
鶴喜さんって、ぐにゃ富さんとおつきあいされてるんでしょうか。
(ウィンクとか)(仕草とか)
(詳しく知りたいかというとそうでもないが)

| | コメント (2) | トラックバック (0)

うらすさび4

「戯伝写楽」みてます。

歌詞が!わかると!すごく!深いな!
いや、戯曲を読むとかDVDチェックするとかすればいいんですが気が進まず。毎度、目と耳を凝らして「あっそーか」と発見する日々を送っております。これはこれで楽しい。
「つまらねえさだめ愚痴るより、演じるんだ、愉快な人生だと」
「面白いよ飽きないよ、この世は」
初日はここで「なんだこの音、頭がわれそうだ」と感じてしまった、言葉も分からないし楽の音も感じ取れないしでさんざんだったんですが、今日も似たような位置だったのに歌詞がスッと入って心が澄み渡った…。

その後の浮世絵ソングもすごく面白いんだけど、まだまだ初見には厳しいよなあ。歌い方がおかしいわけじゃない、音響バランスの制約もあるだろうけどそれが本質じゃない、もともと歌詞が難しいんだよ…(実も蓋もない事実)心情系は好きですけど、説明系は時代的に情報量が多くなっちゃうから難しい思う。

上手前方は角度的に見所満載。二幕の宴席とか見回さなくても全容が目に入るし、十郎兵衛と大田先生のてへぺろの応酬も補足しやすい。トークのせいで両方「ペコちゃん」で通るようになってしまったが厳密にペコちゃんと言われたのは大田先生のほっぺたとの合わせ芸である。

浮雲の言動で市さんがわずかにとるリアクションがめっちゃ心に刺さるのも嬉しい。磔台の上の浮雲の視線の動き(あんただったのかい)もよく見えたなあ…。
おせいが憑かれたように絵を描き続ける、その手前に十郎兵衛が佇み歌いあげる、その構図も上手からだと凄く刺さりました。

おせいちゃん日に日に凄くなる。いよいよ後半、楽しみです。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

うらすさび3

「戯伝写楽」雑感つづき。

■セットの話
初演とはガラリと違う今回のセット。 浮世絵の組み合わせなんだけどすごくいいなあ。
下手側のほぼ半分、階段つきの大きなブロックを内側に畳み込むような動きにできて、畳むと黒っぽい壁になる。これがよく使われるんだけど。
二幕の宴席でこの「壁を開くと宴席が現れる」っていう流れで、ずっと働いてた黒子さんの後ろで大田先生が手伝いだしたのが2日目のハイライト(黒子さんのこう、軽く迷惑してんだろうなーっていう遠慮加減が最高)。
そして、浮雲が心中に失敗して捕縛される、そのイメージで上手側に出てきて、そのまま裏返ったら、今までさんざん見てきた「黒い壁」にぽっかり窓が空いて、そこに磔台と浮雲たちが見える、やがて「窓」は観衆のストップモーションも含めて「おせいが描いた絵」に変わっていく…という流れにおぉぉぉぉ。

■色いろいろ
トークショーで出た話で、「吉野さんは稽古に後から参加されたその日…」っていうネタがたいそうK吾さんらしくてニヤニヤした。
12月中旬までベスやってたから、「初めて稽古に行ったらもう立って台本なしで進めてた、めちゃくちゃ焦った」というのがK吾さんサイドの話で、それは全く本題ではなく(笑)。
それまで大田南畝のところを代役の方が進めていたのが、圭吾さんが入って初めて合わせた日の稽古場が、皆さんの字面通りに言うと「染まった」と。あーーー(想像)。さとしさんの言う「いきなり飛んだ、二回飛んでたのをむしろ一回に減らした」という話はしょっぱなのお座敷のシーン、大田先生が振り払われて吹っ飛んだあれだと思うんだけど、あの動きが前振りレスで入ったらさぞ周りの人はびっくりしたろうなあ羨ましい。
びっくりしたと言えばピンクのチーク顔も、たぶん(小西君以外は※)舞台で初めて見たんじゃないかと思われ、それがアップ顔だったであろうさとしさん大変だ(^^;)。
※証言1「大田南畝がそうしろって言った」(吉野)
 証言2「(化粧前で)しばらく沈黙していたあと突然塗りだした」(小西)

| | コメント (1) | トラックバック (0)

うらすさび2

「戯伝写楽」雑感。
キャスト感、ネタ系ランダムにいきます。

■十郎兵衛
初演の印象で「何をしたかったのかわからない」が残ったんですけど、再演の印象は「そもそもそういう話なんだな」でした。(だから「何のため落ちてきた」ってずっと言ってんじゃん。)(はい。)
「おせいと夢を合わせる」ことを探し切れないうちに、写楽の夢は終わってしまった。
歌の抑揚のドラマチックさがほんっと流石だなあと思います。台詞と歌の感情がシームレスに繋がってる感じで、こんなにミュージカルの歌い方でわくわくする人もなかなかいないなあと。終盤の「なんのため」の歌でキーが変わるところとか鳥肌立つ。

■与七(栗山君)
常識があって目端が利いて生活力あって、でも芸術家の狂気はちゃんと持ってて、それを自分で制御しつつ世界とのバランスも取り、芸も極めていく。考えてみると与七って最強だよなあ。
優しいけど下心はある。健全だけど野心もある。そんな表情の見え方がよかったです栗山君。最初に3人で歌うとこで十さんとおせいを交互に見るところとかすごくいい。
ただ初日にびっくりしたのは、特に前半「これヨシ君が喋ってるの??」と二度見三度見するぐらい台詞回しが東山節だったことで…浪速ことばの練習に音を聞きまくったと聞いて納得。キャラはいい感じに違うので、だんだん自分の味が出てくといいなあ。

■歌麿さん
歌詞が腑に落ちるとめっちゃめちゃいいキャラだなこの人…!と今更開眼した(本当に初演では何を見ていたんだっていう)(聞こえなかったんだからしょうがないじゃん)(それ)
「粋じゃなきゃね」っていう詞をはじめ、江戸ことばのひとつひとつがすんごくツボで、「落語心中」の台詞とか小西君で聞いてみたいなあ…とかうっとりしてしまった。

つづきます。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

うらすさび

「戯伝写楽」観てきました。

面白かったー!

初演では東山君が面白かったことと山路さんがカッコよかったこととカテコでヨシ君による「井上芳雄のマネ」が面白すぎたことしか記憶になかったんですが、本編を観ながらいろいろ思い出した…特に前半、歌が聞き取れなくてイラついたことがまざまざとよみがえった(苦笑)青山でも芸劇でも変わらんのだな!初見者の歌詞の聞き取れなさは!!!

面白かった。言葉さえ分かれば、すごく。
ちょっと根底で何かがズレている気がするけどこのまま進める。

★★★ここからネタバレです★★★

初日の感想「ごめん、はまりっぷりをナメてた…!」
再演組も初登場組も良かった…キャラとしていいなあ!と思ったのは(すいません贔屓はいつもの別格)鉄蔵の山崎さんと与七の栗山君。さとしさんもちろん本当カッコイイし小西君は仕事人…もとい絵師キャラがめっさはまってるし壮さんは花魁からラストまでめっちゃ決まるし、村井さんがまた、お見事。
一番驚いたのはしょこたんのおせい。すごく良かった。テンション↑↑↑なところが後半の狂気にはまったなあ!という感じ。「鉄蔵さん!その顔だ!!!」とか震えが来た。

贔屓への感想「ごめん、役どころナメてた…!」
序盤の大はしゃぎっぷりに「飛ばしてるなあ」と思ったら役的にまだ全然正体出してなかった(笑)。粋人で洒落者で思惑も癖もある、けど大人なので悪びれない(なんだかんだ蔦重より年上)、っていう深みの見え方にワクワクした。
話もキャラも全然違うけど、見え方的に「Dream」のガイドを思い出したなあ。つかみで散々明るく飛ばしておいて(エスパーニャッ!)だんだん様子が変わってくるあれ。
とはいえ可愛いは可愛いのでいくら飛ばしてもいいという、凄まじく楽しいシチュエーション。こいつは春から縁起がいいや。

それにしても歌詞のわからなさはもったいないなー。江戸一番のお嬢さんの名前とかは聞き取れなくても問題ないけど、結構重要な情報(歌麿のスタイルとか与七の立場とか)がぽろぽろ落ちてる気がする。言葉が難しいのと音楽が存在感あるのと両方だなあ。そんな中で「しょうがねえか七十俵五人扶持」とか聞き取らせるのわりと流石だと思う(たまには素直に誉める)。

1月2月と、楽しく追っかけて行きたいと思います。
タイトルはタイムリーに北斎が来てくれたFGOから。富嶽三十六景しびれる…。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

より以前の記事一覧