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リビルド2

再演「ライムライト」つらつら。
テーマはいろいろ。長文です。

■演出変更について
当初の印象は納得と残念の半々でした。テリーとネヴィルの印象があそこまで変わったら「構成ガー」とか分析してる暇なかったはずなんだけど、なんせK吾ウォッチャーがウェイトを置いていたところが全とっかえに近かった。「一度の失敗で笑いの女神が去っていく」でポスタントから傍観者に戻るところとか、ラストで音が完全に消えた中、ポスタントがカルヴェロにステッキを握らせてあげる→暗転、っていう流れも変わり、ネヴィルが見送る形になったとか。初演の一幕のあやふやさへのノスタルジーも相まってうーん、アレとアレがなくなったのが寂しい…が「変えちゃダメ」ではない…うーん、とやたらうなってました。正直、再演版から初演版に変わったんだったらお祭り騒ぎだったと思う(笑)。「オギーが本性出した!イエー!ついてきたいやつだけついてこうぜ!」みたいな。
その末に納得に至った理由はポスタントとしての筋の通し方。一幕の回想とニ幕の終盤で物語が明確に繋がったし、初演だと一幕ラストのカンタベリー劇場の支配人もK吾さんがやってた(「こみっくそーんぐっ」)ことによって曖昧になってた部分もなくなってクッキリした。(佐藤さんによるカルヴェロにはりつく影の名場面も生まれたし)
「この楽屋にきみがいる」ことに対するポスタントの感動が一幕と二幕で通貫したのも嬉しかった。

■ネヴィルと音楽
今回、二幕の冒頭で深まっていく「現実にネヴィルがいる」感動がすごい。一幕ではすべてがあいまいで、二幕で雰囲気が変わってクリアになる、初演では「テリーが踊り出す」ことでそれを味わってたんだけど、今回はあのテリーの「自分が描いた物語」の存在だったネヴィルが、そっくり同じ気持ちだった、あの物語はテリーだけのものじゃない、本当だった。「知ってるよ!」の喜ばしさったらない。
オーディションの時の音楽をクライマックス手前でネヴィルがちょっといじるところも好きでした。自分の存在を言葉じゃなくテリーに語りかける。奥ゆかしすぎるとこがネヴィルらしいし、それがちゃんとテリーに伝わるところのロマン。おそらく屋根裏でずっと聞いていたフレーズそのものなんだろう。
テリーがついた唯一の嘘はカルヴェロへの「ただ、彼(ネヴィル)の音楽に惹かれていただけ」なんだろうなあと。ネヴィルへの思いとカルヴェロへの愛情は彼女の中では何の矛盾もなかったけど、尽くせる相手は一人だけってなった時にはっきりカルヴェロを選ぶところはテリーの好きなところ。
とはいえ一幕の「彼の音楽に耳をすませ=自分の気持ちに耳をすませ」を思えば結局テリーの「音楽に惹かれていた」は「彼に惹かれていた」とイコールで、そのへんをカルヴェロが百も承知なところが切ないとこだなと。

■「あなたはなにも分かってない」
若くて元気で不器用で、正直で一直線。見方はいろいろだけど、テリーは誠実だと思う。
初見の感想ではテリーのネヴィルへの「あなたは何もわかってない」がめっちゃ刺さって、そこ!ネヴィルへの思いを押しやっても通したいカルヴェロへの感情!というところに感動した。公演を重ねて、どっちかというと深まりよりは「勢い」と「力強さ」が増していったのには苦笑しましたが。不器用さに拍車がかかっていく、それはそれでこの方のテリーらしい。ラフな愛でも愛なんだ。
それにしても、なんであんなに「あなたは何も分かってない」が刺さったんだろう…と考えてたんですが、公演終わってから気がついた。そうか、初演ではホントにネヴィルが何も分かってさそうに見えたからだ。流してたんだわ(ひどい)。
テリーのことをずっと見つめてきたネヴィルが、テリーのカルヴェロに対する気持ちと自分に対するそれを正確に見極めて、その上で「結婚するのは間違ってる」と言い放った、そこを正面から「あなたは何も分かってない」ってテリーは跳ね返した。今回の物語ではそういうのがテリーの、そしてネヴィルの美しさだった。

■オルソップさん。
「あの子、バレリーナだったの」っていう言い方がさすがだよね。感情の動きは確かに感じさせながら、盛り上がりすぎるでなく、もちろん冷えてもなく、ただテリーに一気に心が近づいたことがわかる。
カルヴェロの死の床の傍での空気もホント好きでなあ。ポスタントと物理的にも、感情的にもシンメトリーなんだよね。

■ボダリンクさん。
初演では名前が揺らぎまくっていたけど今回はBで始まるボダリンクさんで迷いがなくなってよかった(笑)。ポスタントとコンビっぽく動いてくれてうれしかったなあ。初演のホワイトタイガー佐藤君いじりも大好きでしたが。
初演でやってた、最後の舞台の準備での行ったり来たりが減っちゃったのがちょっと惜しい。あの「20ポンド返してもらうんだー」のるんたるんたの後でまたボダリングがギャー走ってく、っていうのがいいオチだったので(笑)。とはいえ、その後の流れはほぼこの人のタイミングが要になったなと。あの「愛している」「本当に?」のやりとりの直後に開幕を告げるところとか、終盤の「テリー、出番だ!」とか。ほんっと絶妙の呼吸。大好きでした。

■道化がえらい。
構成変更とキャスト変更でガラリと様相が変わった今作だけど、一番変わったなあと思ったのは実のところ、石丸さんのカルヴェロの印象でした。いろんな意味での「老い」っぷり。ちょっとした動作のぎこちなさとか、テリーを笑わせて喜ぶ様子とか。オルソップさんやポスタントとはテンポが合うけど、若者を前にするとちょっと気後れするような感じ。自分の芸や他人の反応に対する自信のなさ。二幕の冒頭、オーディションを終えた舞台で一人で泣き出してしまうところの痛みというか、共感というか。失礼な言い草ですが「ベテランも進化すんだなあ…」としみじみ嬉しかったです。(もちろんオペラでお顔を見ようものならツヤッツヤだけど、そこはいいだろう(笑))

また何年かしたら逢いたいなあ。たいていの舞台は「早くやんないと…!」みたいな焦りがつきものなんですが、今作はホント、何年後でも楽しみな作品になったなと。
ぜひまた。

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