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2018年6月の3件の記事

新生3

2018年「モーツァルト!」二回目を観てきました。

■古川ヴォルフ
前半のバカっぽさがちょっと落ち着いちゃったのは個人的には惜しい(笑)。「僕は大都会に出ます!自分一人の力で!」に「ダメーーーーッ!」と叫びたくなる坊ちゃんぶりは健在でしたが、初日ごろのはっちゃけ感、でも愛せちゃう感は古川君じゃなきゃ出せない味だと思うので。
そういうドラ息子なのに「あなたがたに一つ、おとぎ話を聞かせてあげましょう」の、ほぼ序盤で男爵夫人の寓意に気づいちゃう聡さも実は持っている、そういうギャップには心底ゾクゾクします。バカだけど天才、だけどバカ。だけど天才。
パパとの関係もギシギシ来ました。「最近の曲は複雑すぎる」「これ以上単純には書けないよ」のやりとりがかみ合ってるのが大層嬉しい。ここ長くなるから過去の葛藤は省略するけど(笑)、ブルク劇場の言い争いで「曲が複雑だ」に対して「…またそれ!」っていう表情を浮かべる、このやりとりはレオポルトとヴォルフの日常で、少しずつ限界を迎えていたんだね、…あー親子!あぁぁぁ家族!!!っていう衝撃。長年「これパパが悪いよ」「ああヴォルフが悪い」と思ってきた場面でしたが、どっちも、ぜんぜん、悪くない、でも壊れていく、っていう、クリアな悲しさの伝わってくる場面になったなあと。

■コンスタンツェ
生田コンスタンツェよかったです。素直にヴォルフを好きになって、わけがわからないヴォルフに振り回されて、傷ついて去っていく。このお話のコンスタンツェの役割がとてもすっきり伝わってきたなと。
今の演出だと、この「コンスタンツェの役割」って過去作以上に残酷なんだけどね。「愛していればわかりあえる」の歌詞に全部「(錯覚)」がついてくる切なさ。本人ぜんぜん悪くないしどっちも嘘ついてないんだけど、結果的に完全に嘘になるっていう。
だから「ダンスはやめられない」の冒頭でヴォルフのコート着てる、っていうのは、だんだんずれ始めたヴォルフの気持ちに「少しでも近づこうとするコンスタンツェの努力」だと思ってます。プチ苦言だけどあのコートをあんまりバッサーっと捨ててるとそのへん薄情に見えちゃうぞ。(それはそれで解釈は成り立つけど)

■振付の話
演出変更が大きい割に振付があんまり変わってないなあ、というのが二回観ての感想です。ちょっぴりもウィーンも、セットが変わったことへの対応が大きくて、振り付けはおおむね2010年ベースに見える…特にウィーンなんかマイナーチェンジと言っていい…曲も短いし動きも少ない。「謎解きゲーム」も考えてみると元は全員の動きがものすごい緻密に組まれていたのが、シカネーダーやバルバラ(か?アンナか?)たちだけ振りがついて他の人は動きがずいぶん減った。(セット回転による転換は鮮やかで好きですが)「Mozart!Mozart!」も正直、おとなしいと感じた…ヴォルフ見てろよという内容に見える(正しいっちゃ正しい)。
…と見渡すとやっぱり、こう、例によって、テコ入れが一幕でタイムアップしたパターンじゃないかコレ?という邪推はできてしまうな(^^;)ベスに比べりゃ軽いけどな、話は変えてないから(毒は少しずつ吐いておく)。

■おとぎ話
「星から降る金」をこの作品の主題ととらえると、いろんな物語がとても綺麗に繋がるよね、という話。
男爵夫人が示す「星から降る金」に向かって旅立つということ。「すべての鎖断ち切る」こと。「残されたプリンセス」であるナンネール。
新演出でも「星から降る金」の大切さはより強まっていくものなんだろうなと思います。
そこで、今すごくもったいないのが「魔笛」の扱い。
男爵夫人の語る「おとぎ話」は後にヴォルフとシカネーダーが作り上げる「魔笛」に繋がっていく、「おとぎ話さ!」っていう言葉が、「ついに星から降る金に手が届く」っていう瞬間に重なる…っていうのが以前の解釈でした。「魔笛」のカーテンコールの歓声の中、シカネーダーがヴォルフのために用意した「MOZART」幕を下ろす、そこから垂れてる星のつぶにヴォルフが手を伸ばす…(とアマデが幕を奪って落とす→綱引きへ)そこがよく見える「星」の象徴でもあった。「だから『憧れの精』はシカネーダーなんだよ」っていう解釈も成り立ったし楽しかったけどこれはオタクの主張なんで放っといていいです(笑)。
とはいえ今回も、「破滅への道」で「市民に向かって作品を作る」っていうことを歌い上げてる以上、大衆オペラである「魔笛」をこの作品のクライマックスに持ってくることには意味があってほしい。なので「フィガロもドンジョバも」みたいな導入台詞、あれだけでもなんとかならんか…フランス革命も半分カットしちゃったからすごい大雑把に見えるんだよ、ヴォルフの大衆への向かい方が。
さらに魔笛アトリエのカット、「がんばれよ!」と激励して去っちゃうシカネーダーのもったいなさ。カットされた「ちょっぴり」リプライズが心底惜しい。かつての某井上吉野級にイチャイチャしろとは言わんが(嫉妬するから)(そういう話じゃない)、「大衆が喜ぶヤツだぞ!」「オッケー!任せて!」から何年も一緒にやってきて、ついに「魔笛」が完成する、っていう喜びを表現できる大事なフレーズなのにさあ…たったの四小節じゃねえかケチケチすんなよ…。
とはいえ二回目に観たとき、「魔笛」のラストでキャストが散っていくところ、最後にシカネーダーがちょっと残ってヴォルフに向かって大きく手を振りかざす、っていう動きになってたのは嬉しかったです。

がんばれよ(万感)。

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1789らんだむとーく2018-5

「1789」大阪こまごま。
トークショーネタはつぶやきでドカドカと書いたので本編ネタ。

■苦しみの報い
大阪初日ごろのロベスピエールは、ラストのいわゆる「闇落ち」のニュアンスがなくて、ただ悲しそうで。ロナンが死んでしまってひたすら、悲しみだけが深まっていく印象でした。これはこれで好きだった。
とか言いながら14日に「(白目ギラリ覚醒)シトワイヤン!!!」が炸裂したのを観たときにはキタコレと思ってしまった(笑)。好きなんだよなあ、これ…。実際は彼の中では違いはないのかもですが。
どっちにしてもロベスピエールがロナンを失ってしまった悲しみは、このお話のラストに残される「歴史」に繋がっていく光景だなあと思います。
ロナンのソロパート
「ひとはいつの日か、たどり着くだろう、愛と平和に満ちた」
ここでは静かな表情
「輝く世界…」
ここで決壊、というのはソレーヌ、オランプ、ロベスピエールに共通した表情の抑揚で、これがホント大好きなんですが、
大阪Ver.だと「輝く世界…」で中央に集まる動きがあるからこの呼吸は位置的になくなったな、と初日に思ってて。
それが14日、
移動の動線で後方に退くロベスピエールが、その動線の中の「輝く世界…」でちょうど後方、上で歌っているロナンを見上げる。
こ の 絵 が ね。
キャストが全員集まりつつある、みんな基本前方を向いている、中でもロナンは本当に遠い未来を見はるかすような笑顔で前を向いている、そのロナンをただ一人見上げているロベスピエール。
すごくない?
で、「いつの日か」で振り向いた時にはダラッダラに崩れた表情で、泣き叫ぶように「歴史の!波間に!」っていう歌に入っていく。
美しいものを見た…。
(私は吉野ファンです)(リマインド)

■立役者
上手から見て改めてカッコいいなあと思ったのがリュシル。初演の頃と比べてカミーユの直情傾向(婉曲表現)が強まったぶん、リュシルの落ち着きから来る「あ、この人ががんばってるからデムーランはあのキャラを通せるんだな」感も強まった気がする(笑)。
緑の葉っぱの歌の終盤で、革命家男子が4人まとまって上手の前方で決めるポーズがあるんですが、それを上手側から見ると、その男性陣の後ろに並ぶ人々の先頭に立って、誇らしげな笑顔を浮かべてるのがリュシルで。あ、これは象徴的な絵だな、と思ったりした。ソレーヌとは戦い方は異なるけど、同じくらいパワーを持ってる。バスティーユの振付で初演の頃から感じてた印象。
サイラモナムールもいいんだよなあ…他のカップルは多かれ少なかれ「戦う男」「守る男」と「待つ女」「見送る女」っていう構図に見えることが多いし、そのことに否やはないんだけど、そんな中でデムーランとリュシルが(それなりの身長差をもちながらなお)「並んで立つ」同胞っぽい見え方なのがグッと来る。最後の最後まで、こういう二人だったんだろうなあ、っていつも想像します。

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新生2

「モーツァルト!」雑感続き

■和音ナンネール
新演出版の「モーツァルト!」は改めて「ヴォルフガング」を中心として一本の筋を通したというか、他のキャラクターの役割はそれぞれ過去より一歩引いたものになったかな、と思います。アマデですらそう。
ナンネールについても、冒頭「ただの大人になってしまう」での表情の変化とかなし、市場の曲も思い切り短縮。「モーツァルトの姉」であり「ザルツブルクに置いてきた家族」であり、過去、特に2010年の高橋ナンネールが入った本当の「モーツァルトの影」みたいな役どころに踏み込むことはないんだな、と思いました。
ラストまでは(笑)。
いや、良かった最後の表情。箱を手にとって、箱から溢れる光に目を見開いて、音楽に包まれながら広がっていく微笑。
微笑。
笑った。あそこでナンネールが。
その笑顔が「影から逃れて」のイントロでゆっくりと引いていき、落ち着く顔はあくまで無であり、笑いでも哀しみでも前向きでも後ろ向きでもない、ニュートラルな、ゼロの表情。
「音楽」と共に在った奇跡の少女、ヴォルフと同じお城に住んでいたプリンセス。
その光の表情を消して、市政の人々の中に立ち混じって行くいく。ひゃあ。
ひとつの解釈ですけども。「奇跡の少女です」がグッと戻ってくるラストが凄い衝撃でした。
新しいナンネール、出会えて本当に嬉しいです。

■コンスタンツェ
今までで最も、ヴォルフとコンスタンツェが遠くなったと感じました。ドライな変化だけど、おぉアリだなこれ!と思った。
アマデと凄まじい綱引きを演じ、ほぼヴォルフを勝ち取れる(芸術じゃない、人間としての幸福に引き戻せる)んじゃないかってとこまで来てたhiroやソニンのコンスタンツェの物語も大好きでしたが、今回の綾コンスタンツェにはなるほどと思った。ヴォルフを本気で好きになったし、「あのままのあんたを愛していたかった」のも本当。だけどダンスはやめられない。
いや最高でした「ダンスはやめられない」切なさとかヴォルフに届かない思慕とかそーゆー方向性じゃない、とにかくコンスタンツェとしてここに!いるの!私が!という在り方、カッコよさ。
アトリエでの冷たさもかくのごとしで(あそこの古川ヴォルフがまた史上最高に冷たい(笑))、インスピレーション云々のところが歌じゃなくせりふになったことで、「ふつふつと怒りが高まる」じゃなくてシンプルに怒るシーンになったなと。

■シカネーダー
明るくてクリアーで、元気で親切で、ヴォルフと仲いい。好き嫌いでいうとけっこう好きだなあ。シンプルに、ヴォルフガングに友だちがいるっていうことが嬉しい。
吉野シカネーダーが作ってきたのは歌にしろキャラにしろ本当ーーーにザッツ吉野なので、いつぞやコンサートで「チョッピリ」を歌おうとした芳雄君が元の楽譜とのあまりの違いに気づいて舌打ちした、っていう話もさもありなん(大笑い)。…一事が万事コレなんで、モーツァルトウォッチャーの思い込みを覆すのホント大変だと思うけど遠くからエールを送る。
それにしても今期、羨ましいのが「ちょっぴり」で物理的に色が変わるところ。酒場から銀橋にじゃーっと場所が移って、照明もじゃらっと変わってスポットライトきらめいて・ハイ!みたいな。素直に手拍子に入れたし。(個人的には手拍子はあってもなくてもいいです。どっちかというと観客の拍手が好〜きで引き込めるかのほうが重要(だから黙れオタク))。
あと仮面舞踏会!ほぼソロっぽいダンスがある!あれはねたむ!そねむ!!K吾ファンが何年あそこでソロよこせと思ってきたと思ってんだ羨ましい!!(笑)(笑)

■色の話
かつて「モーツァルト!」の舞台って全体が黒っぽい印象だったんですが、今回そうじゃなくなったことで、視界の印象がかなり変わったなと思います。特に「星から降る金」。リプライズも含めて、茶色い階段の上っていう、ヴォルフ達と同じ空間に男爵夫人がいると、男爵夫人が、よく言えば身近に感じられ、悪く言えば幻想っぽさがなくなったな、という印象でした。なので、一幕の「星から降る金」は以前よりさらに「家族」の絵が強調されたし、涼風男爵夫人もそういう役どころに見えた。暖かく優しく、妖精チックではない(妖怪チックでもない)(蛇足)。
そしてリプライズではより、セットのピアノが強調される。直前まで敷いてあった四角い布(敷物?)をヴォルフがはねのけてピアノの鍵盤っぽいところがむき出しになる、そこを枕に倒れたヴォルフの表情、ピアノの上に伸びたヴォルフ、目を見開いた、強い表情を中心とした絵に、「金の在処見えているはずよ…」という歌声が落ちてくる。
他の場面では基本的に「えーー邪魔ー」だった茶色い階段(すまん)、ピアノの出番がついに来たじゃねえかと思ったんだった。
ついでに絵的な話付け足すと、ピアノセットと絶妙に仲がいいのが猊下。あの手前の丸いとこ(正式名称不明)に収まってるとこといい、マントじゃっらーといい「神よなぜ許される」といい、絵的にものすごくしっくりくる。堂々としてるから階段が似合うんだな。赤いし。
そしてもっとも相性が悪いのが「ここはウィーン」(すいません)。紛れるんだよ色がピアノに!特に肯定派!!衣装の色が!!!!
そーでなくても曲がめっちゃ短縮されて個体認識がしづらくなってるところへ、「床を全部使って左と右に両派が別れる」っていう絵が物理的に作れなくなっちゃったから、「なんか貴族の人が歌って踊ってサーッと終わっちゃった」って印象だったわけだ(私は)、そして背景が黄色いからキューも人も目立たんし、ツィンツェンドルフとサリエリばっか目に入るんだ、そうだそうだやっと分かった。
正直、もっと華やかなナンバーだったのにもったいないと思うけど(^^;)とっととヴォルフの物語に戻るっていう意味では今回らしい変更なのかも知れない。うーむ。

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