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新生3

2018年「モーツァルト!」二回目を観てきました。

■古川ヴォルフ
前半のバカっぽさがちょっと落ち着いちゃったのは個人的には惜しい(笑)。「僕は大都会に出ます!自分一人の力で!」に「ダメーーーーッ!」と叫びたくなる坊ちゃんぶりは健在でしたが、初日ごろのはっちゃけ感、でも愛せちゃう感は古川君じゃなきゃ出せない味だと思うので。
そういうドラ息子なのに「あなたがたに一つ、おとぎ話を聞かせてあげましょう」の、ほぼ序盤で男爵夫人の寓意に気づいちゃう聡さも実は持っている、そういうギャップには心底ゾクゾクします。バカだけど天才、だけどバカ。だけど天才。
パパとの関係もギシギシ来ました。「最近の曲は複雑すぎる」「これ以上単純には書けないよ」のやりとりがかみ合ってるのが大層嬉しい。ここ長くなるから過去の葛藤は省略するけど(笑)、ブルク劇場の言い争いで「曲が複雑だ」に対して「…またそれ!」っていう表情を浮かべる、このやりとりはレオポルトとヴォルフの日常で、少しずつ限界を迎えていたんだね、…あー親子!あぁぁぁ家族!!!っていう衝撃。長年「これパパが悪いよ」「ああヴォルフが悪い」と思ってきた場面でしたが、どっちも、ぜんぜん、悪くない、でも壊れていく、っていう、クリアな悲しさの伝わってくる場面になったなあと。

■コンスタンツェ
生田コンスタンツェよかったです。素直にヴォルフを好きになって、わけがわからないヴォルフに振り回されて、傷ついて去っていく。このお話のコンスタンツェの役割がとてもすっきり伝わってきたなと。
今の演出だと、この「コンスタンツェの役割」って過去作以上に残酷なんだけどね。「愛していればわかりあえる」の歌詞に全部「(錯覚)」がついてくる切なさ。本人ぜんぜん悪くないしどっちも嘘ついてないんだけど、結果的に完全に嘘になるっていう。
だから「ダンスはやめられない」の冒頭でヴォルフのコート着てる、っていうのは、だんだんずれ始めたヴォルフの気持ちに「少しでも近づこうとするコンスタンツェの努力」だと思ってます。プチ苦言だけどあのコートをあんまりバッサーっと捨ててるとそのへん薄情に見えちゃうぞ。(それはそれで解釈は成り立つけど)

■振付の話
演出変更が大きい割に振付があんまり変わってないなあ、というのが二回観ての感想です。ちょっぴりもウィーンも、セットが変わったことへの対応が大きくて、振り付けはおおむね2010年ベースに見える…特にウィーンなんかマイナーチェンジと言っていい…曲も短いし動きも少ない。「謎解きゲーム」も考えてみると元は全員の動きがものすごい緻密に組まれていたのが、シカネーダーやバルバラ(か?アンナか?)たちだけ振りがついて他の人は動きがずいぶん減った。(セット回転による転換は鮮やかで好きですが)「Mozart!Mozart!」も正直、おとなしいと感じた…ヴォルフ見てろよという内容に見える(正しいっちゃ正しい)。
…と見渡すとやっぱり、こう、例によって、テコ入れが一幕でタイムアップしたパターンじゃないかコレ?という邪推はできてしまうな(^^;)ベスに比べりゃ軽いけどな、話は変えてないから(毒は少しずつ吐いておく)。

■おとぎ話
「星から降る金」をこの作品の主題ととらえると、いろんな物語がとても綺麗に繋がるよね、という話。
男爵夫人が示す「星から降る金」に向かって旅立つということ。「すべての鎖断ち切る」こと。「残されたプリンセス」であるナンネール。
新演出でも「星から降る金」の大切さはより強まっていくものなんだろうなと思います。
そこで、今すごくもったいないのが「魔笛」の扱い。
男爵夫人の語る「おとぎ話」は後にヴォルフとシカネーダーが作り上げる「魔笛」に繋がっていく、「おとぎ話さ!」っていう言葉が、「ついに星から降る金に手が届く」っていう瞬間に重なる…っていうのが以前の解釈でした。「魔笛」のカーテンコールの歓声の中、シカネーダーがヴォルフのために用意した「MOZART」幕を下ろす、そこから垂れてる星のつぶにヴォルフが手を伸ばす…(とアマデが幕を奪って落とす→綱引きへ)そこがよく見える「星」の象徴でもあった。「だから『憧れの精』はシカネーダーなんだよ」っていう解釈も成り立ったし楽しかったけどこれはオタクの主張なんで放っといていいです(笑)。
とはいえ今回も、「破滅への道」で「市民に向かって作品を作る」っていうことを歌い上げてる以上、大衆オペラである「魔笛」をこの作品のクライマックスに持ってくることには意味があってほしい。なので「フィガロもドンジョバも」みたいな導入台詞、あれだけでもなんとかならんか…フランス革命も半分カットしちゃったからすごい大雑把に見えるんだよ、ヴォルフの大衆への向かい方が。
さらに魔笛アトリエのカット、「がんばれよ!」と激励して去っちゃうシカネーダーのもったいなさ。カットされた「ちょっぴり」リプライズが心底惜しい。かつての某井上吉野級にイチャイチャしろとは言わんが(嫉妬するから)(そういう話じゃない)、「大衆が喜ぶヤツだぞ!」「オッケー!任せて!」から何年も一緒にやってきて、ついに「魔笛」が完成する、っていう喜びを表現できる大事なフレーズなのにさあ…たったの四小節じゃねえかケチケチすんなよ…。
とはいえ二回目に観たとき、「魔笛」のラストでキャストが散っていくところ、最後にシカネーダーがちょっと残ってヴォルフに向かって大きく手を振りかざす、っていう動きになってたのは嬉しかったです。

がんばれよ(万感)。

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